なんとか保存したい! 

 昨年の4月から阪神間の歴史的建築物を見て廻る会に参加しています。まだ試行錯誤の段階ですが単に見て廻るだけに留まらず評価と記録も残していこうという趣旨で運営しています。メンバーは建築関係者よりむしろ一般の方の方が多いオープンな集まりです。昨年は神戸の御影地区や岡本さらに芦屋、西宮といった区域を廻り渡辺節さんの乾邸やヴォーリスの小寺邸や関学、神戸女学院といったいわゆる定番に留まらずあまり一般には知られていない建物も数多く見て廻り、多くの発見と収穫がありました。
 ヴォーリスといえば豊郷小学校の建替え問題がマスコミでは大きく取り上げられていますが何故に今過去の歴史的建築物に広く一般の関心が集るのか、今の日本の閉塞状況と何か関係があって一時的なブームには終わらないではないか...そんな思いも個人的にはしてます。又乾邸についてはこのままではいつ取り壊しになるかもしれない中、何とか保存につながる活用法はないかという意見や前向きの提案も出はじめています。
 理屈はともかく建築という具体的な物に実際に触れることは歴史を身近に感じることのきる近道であり、なにより楽しみに他ならないとの思いでメンバーの皆とこの会を続けていきたいと考えています。
 この夏には簡単なシンポジウムを開く予定ですので又その節はよろしくお願い致します。

歴史的建築物研究会」 http://homepage3.nifty.com/amenity2000/ 

 
乾邸1
エントランスホール。主として大谷石、大理石を使用してます。天井に円形のガラスが はめ込まれてますが近年の補修で上に防水をかけてしまっているので往時の雰囲気は損なわれています。この他にもあまり神経を払ったと言い難い補修、リフォームが施されていて残念との感想がけっこう出てました。
乾邸2
ホール見上げ。タペストリーはどこか日本の風景を描いてます。厳島のようにも見えますが...。
 
   
乾邸3
1Fゲストルーム。書斎、居間が付随しています。
乾邸4
ゲストルームから2階への小階段。階段を上がってすぐ左に別の居間があり大変チャーミングな覗き窓がゲストルーム上部に設けられてます。
乾邸5
玄関。独特な淡い緑のタイルがすばらしいです。正面のデザインタイルは所謂マジョリカタイルではないかと思います。オーナーの乾家は海運で財をなした一家、さすがに世界中から一級品を集めまくった感じ。ともかく乾邸は単に建築に留まらず日本近代史の生きた証人といってもよいのではないでしょうか。私自身、見学のあとの数日はすごく幸せな気持ちが継続しました。

 乾邸の建築年は1936年。やはり玄関ホールからゲストルーム、2階居間にかけてが材料、意匠、デザインの密度いずれもすばらしいものです。現在これと同じものはまず作れまいと思わせるほど。全体の意匠は米英系のクラシック調と日欧風混在のアールデコ調。ラジエータグリル等の金物類の意匠に大変ユニークで面白いものが数多くありました。

 
関西学院
図書館へのエントランスホール。見てお分かりのように階段との関係をみれば天井が異様に低くなっていて変なのですがヒューマンスケールというか不思議な魅力のある空間でした。ヴォーリスには建築のアマチュア故かこうしたへんてこなところがあっちこっちにあって、それが人々に愛される所以なのかなと思ったりもしました。建築年は1929年。
甲子園大学
正確には旧甲子園ホテル2Fラウンジ窓からの眺め。現武庫川女子大別館。設計はライトの弟子遠藤新。建築年1930年。
 
神戸女学院1
図書館。建築年1934年。大変に凝った美しい模様が天井、梁型に塗装で施されていてすばらしい空間。しばらくみんな動く気がしないようでした。左手2階はギャラリー状の閲覧室となっていてとってもおしゃれな感じ。神戸女学院は他にも大変見所が多くさぞやこんな大学で学ぶことができたら、情操面でもすばらしい教育になるだろうなと感心することしきりでした。
神戸女学院2
有名なチャペル。やはり素晴らしいものでした。左手の柱列の柱頭の位置が異様に低いですが、これが又この空間には欠かせない要素。これも先述のヴォーリスの「魅力的なへんてこさ」の一例でしょう。

 
旧新田邸1
庭からの外観。2階右手の張り出しは和室の縁側的空間。ユニークな和洋折衷様式。
旧新田邸2
現松山大学研修所。在西宮。建築年1928年。設計者・木子七郎。企業オーナーの邸宅。この設計者は始めて知ったのですが、大変に力量のある建築家だと感じました。乾邸程豪華ではないですが、それでも材料、デザインともに一級品というにふさわしく、個人的にはすごく好きになった物件でした。

石川雅洋さん(プライム建築設計)より
 back
Copyright (C) 1998-2006 OM INSTITUTE Inc. All rights reserved.