とにかく、がむしゃらにホルンを練習する日は続いたのだが、今思うに、このホルンとの出会いが僕の人生に影響を与え続けてきたことは否定できないと思う(大袈裟かも…)。たとえば進路を決定するときも、高校は吹奏楽部のレベルの高いところを目指し、大学の選択基準はオーケストラのある大学じゃなきゃダメといった具合である。とにかく、学生時代はめちゃくちゃホルンにのめり込んでいた。

 
僕じゃなくて、息子です(わかるって…ね)。これは、ホルトンのフィリップ・フォーカスモデルです。シカゴ交響楽団の名ホルン奏者が設計。口の形がgoodです。うまくなるかも。

 大学を卒業すると札幌の設計事務所に就職した。さすがに最初の1年は楽器どころではなかった。しかし、仕事にも慣れ余裕が出てくると、またホルンを吹きたいという欲求が起きた。気が付くと、市民オーケストラ2つ・市民吹奏楽団1つを、仕事が終わると楽器を片手に渡り歩いた。オーケストラのフルートの女の子に片思いして、練習帰りにたまたま2人でホワイトイルミネーションの中を歩いたこともあったっけ(絵にならねぇ‥)。
 今の会社になってからも、相変らず仕事以外の時間は、楽器三昧であった。飲みにいくのも、どこかに遊びにいくのも、ラッパ仲間と一緒。挙句のはてに、クラリネット吹きの女の子と結婚してしまうし…。ここまでくるとかなり中毒である。
 さすがに40歳を過ぎると、体力の衰えと仕事の忙しさ、子育てに時間を取られて、オーケストラや吹奏楽団は休団中である。同じ世代の仲間も似たような状態の人が多いが、「こんど復帰します」という声を聞くたびに、僕もまたと、復帰のチャンスを狙っている。
 最近は気が向いたときにホルンをいたずらしているのだが、子供達が「吹かして」とやってくることが、いまの楽しみだ。3人の子供と一緒にアンサンブルでも出来たらいいなと思う。
 さてここで、せっかくここまで読んでくれた方のために、ホルンのことを紹介しておこう(今から、あなたもホルン通になれるかも‥)。作曲家のシューマンが(クラシックに興味のない方は分からないかもしれないが、超有名な作曲家である。トロイメライの作曲でも知られている)、
 「ホルンは、オーケストラの心である」といっている。
 トランペットのような輝かしい音ではない。どちらかといえば、癒し系? 4本のホルンで和音を奏でる時は、さすがに自分で酔いしれるときがある。でも、ホルンの先祖は「狩猟の合図ラッパ」なので、ときには「雄叫びをあげる」力も持っている。映画好きの方なら「スターウォーズ」などの音楽の中で、かならずホルンの音色を聞くことができるだろう。余談だが、僕の結婚式では最初から最後まで宇宙ものの映画音楽で占められていた。
 「弘法、筆を選ばず」といったことわざもあるが、僕の経験上、楽器は選んだほうが間違いなくよい。下手でも、よい楽器を使えば上達するものなのだ。中学・高校とヤマハのホルンを吹いた。大学の時にはオケ(オーケストラを仲間内ではこう呼ぶ)所有のコーンの8Dというアメリカの楽器を吹いた。後で知ったのだが、この楽器、名器といわれていて、現在でもアメリカのボストン交響楽団のプロ奏者が使っている。
 次に使ったのが、安い給料ながら、就職して買った東ドイツ製の(ベルリンの壁崩壊前)ハンスホイヤーという楽器である。値段の割には、なかなかよい楽器だった。中毒というのは怖いもので、この後、イギリスのパックスマン、アメリカのホルトンと楽器を買い換えた。このあたりになると、軽自動車並の値段がする。ホルンは管の巻き方や金属の違いなどによって、1本1本、音色や癖が違う。これは同じメーカーのものでもまるで違う。これが、違う楽器が欲しくなる所以でもあるのだが。現在はあまり吹く時間がない。それでも、次はドイツの名器、アレキサンダーのホルンと決めている(多分、これは宝くじにでも当らないと買えそうもない)。

アルペンホルンです。長さは3mちょっとあります。
アルペンホルンのベルの部分の拡大です。スイスの国旗と花が描かれている。この花は、何でしょう? エーデルワイスですね。

 フレンチホルンの話ばかりしたが、もうひとつ所持しているホルンがある。それは「アルプスホルン」である。あの、アルプス地方のもみの木で出来た楽器である。これはすごく柔らかい木の音がする。スイスでは、牛に聞かせると乳の出がよくなると言われているらしい。獣医をやっている友人のホルン吹きと「牧場にいって吹いてみよう」といつも話しているのだが、もし乳の出が悪くなってはと、まだ実行していない(獣医の彼がいるから、大丈夫かも…)。
 今年の正月に、札幌で一緒にホルンを吹いていた「おじ様」から年賀状が届いた。「今年、休んでいたアンサンブルに復帰するために、楽器のリハビリ中…」と。
 そろそろ、僕の中の悪い虫も、活動を再開するチャンスを狙い始めたみたいだ。

 

LAST UPDATE [ Tue, 2003-03-11 14:35 ]
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