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「ホルン」という楽器を知っている人は、意外に少ない。たとえば、こんな具合である。
「ねぇ、戸田さんって、楽器やってるんだってね。何やってるの?」
「ラッパさ」
「へぇ、トランペット吹くんだぁ。かっこいいね」
(おいおい、俺がトランペット吹くキャラじゃないことぐらいわかっているくせに‥)
「いゃ、トランペットじゃないけど…」
「じゃあ、何?トロンボーンとか?」
(ほらほら、またお決まりのコースかい…)
「いや、ホルン」
「どんなのだっけ? だいたい想像はできるんだけど」
(ほんまかいな? わからないと思ったから、ラッパって言ったのに…)
「え〜と、管をぐるぐるに巻いた、カタツムリみたいな楽器だよ」
(ほんとうは、こんな表現はしたくないんだけど…)
「あ〜。わかった。あの大きな低い音のする楽器ね。すご〜い」
「・・・・」
(あんた。そりゃチューバじゃん…)
僕とこの超有名な楽器?との付き合いが始まったのは、文字通り中学校の放課後タイムからである。中学1年生の時、本当は「科学クラブ」に入ろうと思っていた。しかしこれは、ひとつ上の姉貴の言葉によって、変わってしまった。
「音楽の先生が、弟、ブラスバンド部に入らないかって聞いてきたから、いいですよって言っといた」
「なんで、あんたが返事するんだよ」
と思いながらも、姉思い(じつは、頭があがらない)の僕は、いつのまにかブラスバンド部に入ることになってしまった。いまでこそ吹奏楽は盛んになっているが、その当時は楽器が揃っている学校は少なかった。だから当然、楽器の選択の自由など、ありはしない。先生に「これ、やってみるか」とあてがわれたのがティンパニーという打楽器だった。「リズム音痴の俺がやっちゃまずいんじゃないの」と思っていたら、やはり半年で首になった。
次にまわされたのがチューバだった。ピカピカ光ってかっこいいし、「男は、やっぱり金管楽器だよなぁ」なんて、ちょっと嬉しかったのだが、身長が小さかった僕は吹口まで口が届かなかったため諦めざるをえなかった。
そして、次にまわってきたのがアルトサックス。この楽器は中学2年まで吹くことになるのだが、内心嫌で嫌でたまらなかった。なぜなら、当時、木管楽器は女子、金管楽器は男子といったイメージがあったからだ。いま思えば、サックスにしておけばよかったと思う。理由は簡単! 「サックス奏者はホルン奏者よりずっと女性にモテる」からだ。
さて、肝心のホルンとの出会いであるが、じつは自分で楽器を買うまで、ホルンなんて見たこともなかった。市内のどの中学校を見回しても、ホルンを持っている学校などなかったのである。そのかわりメロフォーンという楽器が使われていた。これはホルンとはまったく違う楽器なのだが、形はホルンに似ている。というわけで、僕もこれがホルンだと思い込んでいた。そんなある日、音楽雑誌を見ていたところ、ある一枚の写真に釘付けになった。それが、初めて見た「ホルン」の写真であった。とっても美しい楽器だと思った。音色も分らないのに形の美しさに惚れてしまったのだから呆れてしまう。
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