2003/04/18掲載
 

そもそも、
 学生時代、初めての海外旅行で屋台の軒先にぶら下がるカバンを買った。それはデザインがとくに優れているわけでもなく、つくりが丁寧だったわけでもなかったけれど、大きさがちょうど良く、丈夫そうだったのだ。
 あれから十数年。遠出の時は、いつも一緒。原形は、フタをベルトで留めるようになっていたが、ベルトの端が反り返って、ピラピラと腕に触れ、気になってしょうがない。革が厚いことをいいことに、「堀商店」で引出し用の真鍮の把手を購入して、フタを留める金具に改良。手に触れるモノは、気に入らないところばかりが目に付く。家具用金物は、カバンにはやはり無骨。何度かヤスリで削り、太さを変えるとなんとか馴染んでくる。その後もちょこちょこと改良を重ね今に至っている。しかし、そろそろくたびれてきた。とくに自分で手を加えた部分の縫製がほつれ、革自体もパサパサしてきた。一生モノのカバンが欲しい。

とりあえず、
 毎日の外出時に、数点の小物を入れて欠かさず持ち歩く小さなポシェットは、ユニクロで買った1000円のナイロン製。縫製がしっかりしていて、大きさもちょうど良くて使い勝手にも満足。よほどの荷物がないかぎり、基本的に手には何も持ちたくない派。その点、肩掛けにも、手提げにもなるこの形はすこぶる便利。とはいえ、毎日持ち歩いているものだから、学生服のズボンのようにテカテカに黒光り。さすがにユニクロはどこもほつれない。かわりに生地が擦り切れ、薄くなって向こうが透ける。あまりに情けない状態。おまけに肩掛けのユニクロは、歳不相応と周囲からの冷たい視線。

 
愛用のくたびれ肩掛けカバン てかてかのユニクロ
   

そうだ!
 カバンの前にこのポシェットを何とかしよう。セルフメードもいいけれど、自分の縫製技術の未熟さを恥じて、ポシェットをフルオーダーすべくお店をあたる。餅は餅屋。
「ラピタ」という雑誌のカバン特集が、グッドタイミング。ここだ!っていう気配の店では、ポシェットだと小さすぎて請け負っても儲からないと断られるも、店を持たないオーダーメード専門の女性職人を紹介してもらう。断られついでに、革のイロハを教えてもらう。クロームなめし、タンニンなめし、縫い糸のこと…。糸一つとっても様々らしい。
 そこのお店は、エルメスと同じ糸を使っているとのこと。ここは一つ小市民的発想で、糸だけでもエルメス! しかも赤糸。お任せの革の色と想像以上にいいコンビネーション。女性職人にぜひそれで! 詳しい打合せが始まる。シンプルな一室だけの肩掛けポシェットができればいいと思っていたのだけど、マチの取り方、寸法、ファスナーの納まりと…と、聞けば聞くほど悩まされる。ボール紙がちょうど似たような硬さで、ホッチキスを駆使して原寸模型をつくること十数個。最初の打合せから半年、5mm違うだけで、見た目、触った感じの大きさががらっと異なり、未だ形が定まらず、優柔不断がたたってます。マチをきちっと周囲に廻した模型を肩に掛け、立ったり座ったり。手のひらが常に触れているかと思うと、マチの当たりが硬い。最有力候補としては、模型写真の一番手前、マチを周囲に出さない納まりを考えていますが‥‥何時の日か完成をご報告できることを願っています。

 
         エルメスの麻糸 ボール紙での試行錯誤
 

LAST UPDATE [ Thu, 2003-04-17 10:46 ]
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