2003/05/16掲載
 

 信州・小諸に移り住んで来たのが平成元年。茨城県竜ケ崎出身の私と東京ひばりが丘出身の妻には小諸に親類はなく、仕事以外でのお付き合いは、近所の人や子供のPTAなどで知り合う人など十数人と、数えるほどだったと思います。当時、幼稚園に通いはじめた息子も今は高校生になり、私たち夫婦も小諸で15年、いろいろな人に出会い、様々な集まりにも誘っていただくようになりました。今では、初めて出かける所で知った人に合ったり、初めて会う人と話すうちに共通の知り合いがいたりと、小諸の人の輪が私たちの中でつながってきたように感じています。そんなわけで、わたしの放課後タイムは小諸の人たちと過ごすことが多くなりました。
 「酒呑み百姓の会」は、平成6年(1994年)冬、米が緊急輸入されたタイ米騒動のときにスタートしました。集まった仲間と一緒に酒を呑む席で「米を作ってみよう」ということになったのですが…その酒の席で春から米作りをするための段取りが整ってしまいました。田んぼを貸してくれる人、種もみと苗床を提供してくれる人、トラクターや田植え機、米作りの指南役まで、その場で10人ぐらいの小諸の人の輪がつながりました。会の会長は、いちばんの酒呑みである下崎さんに決まり「酒呑み百姓の会」となりました。下崎さんは家畜や養魚の餌を作る飼料会社の研究熱心なこだわり派。仕事の飼料づくりでは飼料配合に微生物やミネラルなどバイオテクノロジーを駆使するという人物。米作り指南役はリンゴ農家の宮嶋さん。最先端のリンゴ作りをリードする第一人者。
 かくして初めてのはずの米作りでしたが、会長の下崎さんと指南役の宮嶋さんの熱心な話しは米作りにとどまらず、土や堆肥、水の温度や気候のことなど‥にもおよびました。米づくりにここまで心配りをするのかと感心しながら聴きました。コンセプトは、元気な稲を育ておいしい米にしよう。量より質にこだわりたい。
 さて、苗づくりでは苗箱に薄めに種もみを蒔き、しっかりと根の張った苗を作りました。田植えでは、田植え機を微妙に調整して3本〜5本の苗を取り一株にして、20センチぐらい少し間隔をおいて植えました。株間を空けることで根をしっかり作り、大きく元気な株にして、立派な稲穂を育てようということでした。田植えが終わって見る田んぼは、隣の他の田んぼに比べ、明らかに薄い感じです。さらに窒素分の少ない堆肥を使っていることもあり、なかなか草丈が伸びてきません。少し心配しましたが、苗の根元にまで日がよく当たり、田んぼに入ると泥が暖かく、草を取る手を苗の間の泥の中に入れると根が張ってきているのがよく分かりました。何気なく眺めていた田んぼの風景でしたが、思わず稲の根元や稲穂の様子が気になるようになったのは、この時からです。
 ところで、ひとつ苦労するのが田んぼの草取りです。草が生えにくいように、泥をかき混ぜるカブトガニやオタマジャクシを入れたり、木炭の粉を流してみたり。そしてもうひとつ苦労するのがスズメ対策。稲穂をつつくスズメを追い払うために、案山子を立ててみたり、キラキラ光るテープを張り巡らせたり。はじめての米づくりでしたが、素人ながらに様々に工夫を凝らし試しました。そのかいあってか、秋には見事な稲穂が実り、おいしい米を収穫することができたのです。

2001年の田植えを終えたばかりの田んぼ。代かきがうまくいかず、水の深いところ浅いところができてしまいました。苗の育成にばらつきが出てしまい管理が大変です。写真の遠くの山は浅間山、噴煙が上がっています。
   

 この最初の米づくりの中で、また新しい人の輪がつながっていきました。ちょうど「夏子の酒」と題したマンガが話題になっていたころで、自分たちの作る米で酒ができないかと話しが盛り上がり、小諸市内の酒蔵の主人と杜氏に話が伝わりました。さらに「夏子の酒」に幻の酒米として登場する「亀ノ尾」が、隣町の北佐久農業高校の試験田で栽培されているとわかり、とんとん拍子で幻の酒米「亀ノ尾」を作って酒蔵で仕込んでもらう段取りが整ったのです。
 2年目の春は、分けてもらった貴重な「亀ノ尾」の種もみで酒米を作り、酒蔵で酒を仕込むことになったのです。そして今年は10年目の米作り。4月19日に「亀ノ尾」の種もみを蒔いて苗床を作りました。田起こしをして5月中旬に代かき、下旬には田植えの予定です。
 10年目とはいえ、毎年試行錯誤の10回目。苗床ができ上がってビールで乾杯。今年の作戦会議も大いに盛り上がりました。
 小諸の人の輪が身近な暮らしの中で多様な人々をつないでいるのがおもしろいのだと感じます。老若男女、農家や工場、商店や問屋、味噌蔵や酒蔵、主婦やサラリーマン・・・いろいろな人が身近に暮らしている町が小諸です。

※米作りの経過は目白カフェ内の〈小諸だより〉で順次紹介していきます。どうぞご覧ください。
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今年4月12日の新酒会のもよう。新酒にかんぱい。 ビニールハウスの中の苗床。今年は5月に入って気温の高い日がつづき、苗の育ちが早まっています。ビニールハウスの裾を開けて温度調整です。しっかり根の張った苗を作ります。
 

LAST UPDATE [ Mon, 2003-05-12 17:24 ]
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