2003/03/07掲載

 皆様よくご存知の坂倉建築研究所の代表者で、庭と古建築の実測・研究でも知られる故西澤文隆氏は、40年近い借家住まいを経て、お亡くなりになる10年ほど前にご自宅をお建てになりました。その頃はすでに数奇屋建築に一家言ある建築家と見られていました。その西澤氏がご自宅をRCの打ち放しでお建てになるということで、関西在住の建築関係者の間では期待感と意外感を持って注目されていました。
 私は竣工後まもなく担当者の金沢良春氏のご案内で拝見致しました。そのコンクリート打ち放しのご自宅ではあらゆる試みを実現しておられ、細部にわたって見るべきところが多くあり時間が足りなかった記憶があります。ル・コルビジェのモデュロールに日本建築の内法寸法である五尺七寸、茶室の内法寸法五尺一寸、畳寸法三尺一寸五分×六尺三寸を併用して平面計画と断面計画に採用されました。芯々寸法のみならず、内法寸法にもモデュロールを使用したい、とかなり苦心されたと伺いました。
 当時、西澤氏がその著書や講演会などでよく言っておられたことに「透ける」ということがあります。日本建築の極意は「透け」にあるという。随所に「透け」を感じさせられました。西澤氏は週末ごとに精力的に京都・滋賀・奈良などに、日本の名建築を見て歩かれ、実測も続けておられました。「知識は平素から蓄えておかなければならない。消化して吸収して肉体化しておかない限り、いざという時の役に立たない」「数奇屋の世界では人は好き放題にやりたいことをやる。やりたいことを持っているからやれるのであり、どのようにやればやりたいことがやれるか心得ているからやれるのである。‥‥‥やりたいことをやると当然納まらぬ所ができる。そこを当意即妙に納めてみせる能力がなければ真の数奇屋は造れないだろう。‥‥‥」(彰国社:ディテールより)

 

LAST UPDATE [ Fri, 2003-03-07 17:43 ]
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