2003.4.23掲載

 OM研究所は活動の一環として、全国各地で活動を続けている工務店、設計事務所の人たちと、住宅・環境に係わる諸情報の交換・勉強会等の企画を具体化しはじめた。
 第一回を東海地区に設定し、去る1月31日(金)、名古屋での会を開催した。会合は、多くの参加者を得て、種々の情報、問題点、これからの方針等話し合いが持たれ、手応えのあるミーティングとなった。また、参加設計事務所の設計によるOMソーラーハウスの見学会も同時に開かれた。そして翌日、2月1日(土)のオプショナルツアーである愛知県立芸術大学の見学会に同行した。
 二十数年ぶりに見るなつかしい建築に、今どのようになっているのだろうか、綺麗な姿でいるだろうか、などと種々の不安をかかえつつ車を降りた。
 大学入口部分にある大学本部棟、その場から見渡せる教室棟・奏楽堂・図書館等が元気そうに建っているので、まずは一安心した。
 しかし、すぐに困ったことに遭遇。この大学の施設は身体障害者に対する配慮がまったくなされておらず、起伏の多い学内を車椅子で見学するには多くの人の助けが必要となることだ。1960〜70年代のころ、公共建築を含め、弱者対策は何一つ考慮されていなかったと思う。その当時にこの大学の設計に携わった者の一人として反省・慙愧の念を憶えた。
 当日はあいにく大学が休みのため、各建物内に入れず外観のみの見学だったが、学内の樹木もかなり生長し、整備され、よい建築に囲まれ、ここちよいキャンパス空間が生成されている。これから、これらの建築がさらに多くの人に利用され成長・変化していく様を、期待の念を込めて見守りたいと思う。

※愛知県立芸術大学ホームページ http://www.aichi-fam-u.ac.jp

1.講義室棟  2.大学本部  3.音楽学部棟  4.美術学部棟から講義室棟をのぞむ
5.美術学部棟  6.学生ホール(手前)、図書館(奥)  7.講義室棟下から美術学部棟をのぞむ
8.広場から左に講義室棟、右に奏楽堂をのぞむ   以上、写真すべてOM研究所撮影

資料(建築文化1970年1月号より引用)
※写真は見学時にOM研究所撮影のもの/奏楽堂は改修工事中であった
 

愛知県立大学奏楽堂


設計/建築:東京芸術大学建築科教室 吉村順三・奥村昭雄
                  三沢浩・永橋為成・寺井暢彦・塩見史朗・古賀伸真・
                  永田昌民・石田信男・益子昭子・加藤大和・木村韶子
    構造:温品建築研究所 温品鳳治・大沢真・笹木司・浜宇津正・松山明子・井上元治
    設備:建築設備研究所
    音響:東京大学生産技術研究所 石井聖光研究室
監理/愛知県建築部営繕課
施行/大成建設
構造/R.C造、折版部P.Sコンクリート造
工期/1968.7〜1969.9
所在/愛知県愛知郡長久手村



 
奏楽堂正面入口

 愛知県立芸術大学は、名古屋市東部から瀬戸に至る丘陵地帯のうち、約40万平方メートルの敷地に建設されている。ひくい松の茂る丘の重なりと、点在する農業用水池、瀬戸の山とはるかに御嶽山、そして東山の市街を望見する。それらがそこの風景である。
 美術・音楽の2学部から成り、学生数600、第1期工事完成とともに開校され、現在最後の工事、体育館その他が進行中である。キャンパス全体の計画は、完成後に発表の予定であり、今回は、奏楽堂について紹介する。
 芸術大学の奏楽堂は、主として音楽学部の学生が、将来ステージに立つ練習を行うところであるが、愛知芸大の場合には、それ自体が県の文化施設の一つであり、対外演奏を行ない、商業劇場とは違った環境で市民が音楽を楽しむ場所でもある。
 校舎群は、南北二つの丘とそれをむすぶ狭い尾根状地形の上に配置されている。尾根の上に建つ共通講義室棟を含め、南北軸にそって共用施設、東西に音楽・美術両学部を置いている。奏楽堂は、正面を講義室棟・大学本部棟の広場に面し、楽屋側は音楽学部棟と連絡している。

 
南面

 外部環境に開かれた校舎群の配置の中で奏楽堂もまた、”閉じた箱”とならないこと、日常的生活の延長のうえにオーディトリアム空間があること、自然採光があることなどを意図した。P.Sを導入した折版を長軸方向にかけ、左右の壁にガラスを連続させた。オーディトリアムのガラス面には、電動ブラインドを仕込んでいる。下部ボックス内に格納され、ふつうのブラインドとして働くとともに、全閉すると同時に方立に組み込まれたガイドレールが閉じて遮光の役をする。
 折版はそのまま室内に露出し、その規則性が音響的に影響することをさけるため、一部に反射板を取りつけた。折版面のインシュレーションは、スラブ外部に硬質ポリウレタンフォームを接着している。座席と聴衆以外の部分では、折版面を含めて室内仕上にいわゆる”かたい”材料ばかりを使う方針をとった。壁の陶製ブロック積みの一部表面に孔をあけ、内部ホローをレゾネーターとして低音部の吸収を受持たせている。残響時間は、空席時500Hzで1.9sec、全周波数についてかなりフラットな特性をもっている。
 舞台面は、二つの大迫りによって段床を作り、客席床面と平にすることもできる。また、可動衝立によって、ソロや小編成の演奏にも対応できる。

 
奏楽堂内部

 一般照明は折版面を照らす沃素電球の間接光により、座席背の豆電球で譜面・プログラムを読む手もとを照らす。一般照明の沃素電球器具・舞台照明器具は、ワイヤー吊りの配線ラック・照明ブリッジなどに露出配置され、調光室でSCR調光する。
 客席部の空調は、床下トレンチから側壁曲面部を立上がり、FRPの吹出ノズル(角度可変)から吹出す。リターンは同じ壁の舞台側面より吸込み、同じトレンチ自体をコンクリートダクトとしてもどる。窓ガラス面からの冷気が聴衆の足もとに入りこむことをさけるために、暖房時は電熱ロードヒーターを用いた床パネルヒーティングを併用している。
 校舎群の中には車を入れないので、車は正面入口から1階下の北側側廊面につける。同じ面に大道具搬入口がある。楽屋部分の教室は、ふだんは音楽学部のソルフェージュなどの授業に使われ楽屋の大部屋を兼ねている。

(奥村昭雄)




※この1970年1月号で掲載されている建物と時事ニュースなどもちょっとご紹介しておこう。33年前の社会情勢と共に建築業界の動きが垣間見える。

[建物]
栃木県議会棟庁舎/大高建築設計事務所、神戸商工貿易センタービル/日建設計工務大阪事務所、まんとみ幼稚園/林雅子、由田学園千葉幼稚園/内藤彰建築事務所

[ニュース]
京王プラザホテルの建設進行中。EXPO'70の建設状況を見る/建設現場を見てきた人たちの話のなかに、スイス館の評判がよいと聞いているが……。

[時事往来] 
●都民ホールの設計、東畑に決まる:
東京都が明治100年記念事業の一つとして、総工費約50億円を投じて、新宿西口の淀橋浄水場跡地4号地に建設する都民公会堂(都民ホール)の実施設計が東畑建築事務所に決定した。

●過激派学生のゲバに悩む建設業界:
70年代安保改訂期にさしかかり過激派学生によって建設現場が荒される被害に頭を痛めている。

●都庁舎移転など7項目を要望:
新宿新都市開発協議会が美濃部都知事に出した報告書に、都市ガスを利用した地域暖冷房を行なうことを決めたことや庁舎移転案に住宅建設案を併せることに反対であることなどが盛り込まれている。

●坂倉建築研究所が新たに発足:
69年9月に坂倉準三氏が逝去された後の事務所再編成について。役員/取締役会長・坂倉百合、代表取締役・西沢文隆、取締役・吉村健治、取締役東京事務所長・阪田誠造、取締役大阪事務所長・山西喜雄、取締役・戸尾任宏・柴田勝之・竹村真一郎、監査役・矢内田二郎、相談役・坂倉又吉


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